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はたらく魔王さま! (3) (電撃コミックス)

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はたらく魔王さま!SS 恵美「魔王と私の子供が可愛くて困る」

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■注意!

・2ちゃんねるのSSです
・ニヤニヤ度100%のため、自宅外で読むのは避けることをすすめます。
・3巻から登場する真奥と恵美の○○が登場します。 夕方の幡ヶ谷を歩く女性がいた。
凛々しく整った容姿と腰まで伸びた長い髪。
初夏の陽気に滲む汗をハンカチで拭き取りながら、
やがて彼女は目的地――マグロナルド幡ヶ谷駅前店に
辿り着くと、自動ドアの前に立った。

店員「いらっしゃいませ! ……ああ奥さん、お久しぶりです」

顔見知りの店員が声をかけてくる。
事情があり数えきれないほど店に通いつめているため、
彼女は既に店員の間でも身内扱いだった。
奥さん、と呼ばれた瞬間彼女は
わずかに顔を引きつらせたが、素直に挨拶を交わした。

店員「真奥さんならもう上がりましたよ。多分もうすぐ……あ、来た」

店員の向いた先から、二十歳そこそこと思わしき黒髪の男性が現れる。
彼女の姿に気づくと、軽く片手を上げた。




真奥「よう。悪い、待たせたか、恵美」

恵美「別に。今来たところよ」

店員「真奥さん、お疲れっす! 羨ましいなあ、迎えに来てくれる奥さん」

真奥「だったらお前も彼女でも作るこったな。んじゃ、お疲れ。またな」

店員と真奥の気軽な別れのやり取りに、再び顔を引きつらせる。

二人で店から出る。
未だ照っている太陽の下で、彼女は愚痴るように呟いた。

恵美「……奥さんって。奥さんって」

真奥「ホントお前……いい加減慣れろよなぁ」

苦笑しながら彼が言う。

彼はマグロナルドに勤めるフリーター。
彼女は電話会社に勤める契約社員。
どこにでもいるような男と女だった。
そして父であり、母であった。

ただし、ごく普通の恋もしていないし、ごく普通の結婚もしていない。
そして何よりも普通でないのは――彼は魔王であり、彼女は勇者であった。




真奥「仕事、どうだ? 疲れたりしてないか?」

恵美「平気よ。梨香がよくしてくれるし、周りも理解があるから」

二人は幡ヶ谷の怒濤流(喫茶店である)で向かい合わせに座り、話し合っていた。
真奥が気遣うように言葉をかける。

つい先日まで、恵美はある事情により、長期に渡って仕事を休んでいた。
最近復帰することができたが、あれだけ休んで業務に支障はないのか、
また周りから疎ましがられてはいないかと気にしていた真奥だった。

恵美「心配してくれるんだ? あなたが?」

恵美の皮肉に、真奥が顔をしかめる。

真奥「言わせんな、馬鹿」

真奥「……そういやどうする、プレゼント」

恵美「ええ」

二人には子がいた。
魔王と勇者である彼らの間に授かった奇跡のような存在。
立場上敵同士である彼らだが、子供のことについてだけは
すべての諍いを忘れ、手を組むことが暗黙の了解であった。

その子が二人の前に現れてからもうすぐ一年になる。
その際に何か誕生日プレゼントを贈ろう、というのが
最近の二人の話題だった。




恵美「ネットで色々見てみたんだけど、どうもピンとこなくてね」

恵美「考えたんだけど、今度休みが合ったとき、あの子を連れて菱松屋でも行ってみない?」

真奥「欲しがったものを買うってことか。でもそういうの分かる年か?」

恵美「さあ。でも、例えば服とかなら、やっぱり似合うか直接合わせてみたいし」

真奥「まあなあ。なんか、何買っても喜んでくれそうな気はするけどな」

恵美「そこが逆に悩ましいわよね」

かつて刃を交えた敵同士である彼らが、まるで
普通の夫婦のように自然に語らう。不自然なほどに。
それは彼らにとって未だ慣れないことではあったが、
子への情がそれに勝った。




話が一段落し、お互い飲み物を啜って一息つく。
遠くを見るようにして真奥が言った。

真奥「……何だかなあ、平和だな」

恵美「……ええ、そうね」

真奥「いいのかな俺、こんなんで」

自嘲するような口ぶりの真奥を、恵美がまっすぐに見つめる。

恵美「いいわけないでしょう」

かつての戦いで敗北した真奥は異世界エンテ・イスラから
日本へ逃れ、それを追って恵美も日本に来た。
そこから二人の奇妙な因縁は始まったのだ。

恵美「だから私がいる。あなたの側に」

真奥「……だよな」

恵美の言葉に何を思ったか、真奥が小さく笑う。

真奥「そろそろ出るか。もう皆来ちゃうだろ」

恵美「そうね」




二人が向かったのは、真奥が日本に来て以来住んでいるアパート、
ヴィラ・ローザ笹塚。笹塚としては安い家賃が取り柄で、
逆に言えば家賃なりの佇まいだった。有り体に言えばボロかった。
恵美が何度転げ落ちたか知れない錆びついた階段を慎重に登って、
真奥の住む201号室に入る。

そこにいたのは小柄な男と和服の女性、そして寝息を立てる赤ん坊だった。

真奥「帰ったぞー。面倒見させて悪かったな、漆原、鈴乃」

鈴乃「ああ。何、たまには夫婦水入らずの時間を過ごすのもいいだろう」

鈴乃「幸いこの子も大人しくしていてくれたしな」

漆原「嘘つけ、こいつが泣きだしたとき頑張ってあやしてたのは僕だぞ主に」

漆原「ったく、ゲームが全然進まなかった」

鎌月鈴乃、本名クレスティア・ベル。
漆原半蔵、本名ルシフェル。
彼らもまた、エンテ・イスラから事情があって日本に来た者達だった。

恵美「……こうして見ると、あなた達が夫婦みたいね」

恵美の笑いながらの軽口に、生真面目な鈴乃が顔を赤くする。

鈴乃「ばっ……何を言うエミリア! わ、私はこのような甲斐性なしに惚れるほど趣味は悪くない!」

漆原「落ち着けよもう。いい年してそんなだからからかわれるって分かんないの?」

鈴乃「……ちょっと待て貴様、いい年と言ったな? 言ったな? うん千年もニートの貴様が言ったな?」

漆原「……いや、何でもないです、失言でした、はい」

かなり本気の殺意に満ちた聖法気を滾らせる鈴乃。
ここで殺し合いなど始められてはかなわないと真奥が止めようとしたとき、
再びドアが開いた。




芦屋「おや、もうお戻りになられていたのですね、魔王様」

芦屋四郎、本名アルシエル。真奥のエンテ・イスラ時代からの腹心。

千穂「こんばんはー! 途中で会ったから一緒に来ちゃいました。ねー」

佐々木千穂。真奥のバイトの後輩。
その千穂が後ろを振り返り声をかけると、小さな影が勢いよく部屋に飛び込んできた。

アラス・ラムス「ただいま! パパ! ママ!」

真奥「おう、おかえり、アラス・ラムス。芦屋、お迎えサンキュな」

恵美「おかえりなさい。ちゃんと手を洗いなさいね?」

アラス・ラムス「だいじょうぶ! わたし、もうおねえちゃんだもん」

胸を張るアラス・ラムス。真奥と恵美の「初めての」子供。
出会ったときよりも成長した姿が、そこにはあった。




恵美「私も手伝うわよ」

鈴乃「いいから。皆で集まるときくらいゆっくりするといい」

集まった面子で料理ができるのは芦屋、鈴乃、千穂、そして恵美だが、
そもそもこの部屋の台所は狭く、大人数では逆に効率が悪い。
結局恵美の体調のことも考慮し、芦屋と鈴乃で料理をすることとした。

残った面々は部屋の中央のテーブルを囲み談笑している(漆原はパソコンに向かっていたが)。
その側には未だ熟睡した赤ん坊もいた。

真奥「どうだ、幼稚園は楽しいか?」

アラス・ラムス「うん! きょうはね、みんなでおにごっこしたの」

真奥の膝の上のアラス・ラムスが満面の笑みで答える。
身体はパソコンに向けたまま、漆原が背中で茶々を入れてきた。

漆原「よくいじめられずに済んでるよね。真奥アラスラムスで戸籍登録したときはどうなるかと思ったけど」

千穂「何でそう漆原さんって意地悪なことしか言わないかなー」

恵美「ホントよね。自分だって半蔵の分際で」

漆原「それ真奥が適当に付けた名前だよね!?」

アラス・ラムスは真奥と恵美の本当の子供ではない。
特殊な生まれ故、最初は果たしてどのように成長するのか、
そもそも成長しないのかが二人の悩みの一つだったが、
時が経つと徐々に背は伸び言語能力も上達した。
その姿が幼児程度になった時点で、真奥は彼女の戸籍登録と
自分の養子としての届出を催眠魔術を利用し行ったのだ。
今では、ときに芦屋達に送り迎えを頼みながら幼稚園に通わせている。




真奥「仮にあそこから名前変えても、アラス・ラムス自身が対応できなさそうだったしな」

恵美「髪の色がどう見ても日本人じゃないから、初見で変に思われても大抵納得されるしね」

言いながら恵美がアラス・ラムスの頭を撫でると、くすぐったそうに笑う。

漆原「まーそういう意味では真美は無難で良かったよね」

恵美「最初は貞夫から取って貞子とか、読みは同じだけど魔王から取って魔美とか考えたんだけど」

漆原「……そっちじゃなくてよかったよ。いや、本当に」

真奥「心配すんな、そこは俺が全力で止めた」

恵美「……そんなに私のセンスおかしいかしら?」

千穂「あ、はは……」

皆の視線が赤ん坊に集まる。
真奥真美。もうすぐ一歳の、真奥と恵美の正真正銘の子供だ。
自分がどれほどの破天荒な環境に生まれてきたかもつゆ知らず、
まだ言葉も喋れない魔王と勇者の子は無邪気な顔で寝ている。

産休中は恵美が付いていたが、フリーターの真奥一人の稼ぎでは
増えた家族を食わせるには心もとなく、恵美は復職。
同じアパートの鈴乃や漆原、芦屋の手を借りて育てている状態だった。
本人も認める自堕落ニートの漆原ではあったが、子供がアラス・ラムス一人の頃から
妙に子供には懐かれ、また本人も何だかんだと相手をしてやっていた。

鈴乃「ほら、できたぞ。皆テーブルの上を片付けて皿を並べろ。真美を起こさないよう静かにな」

そうして夕食が始まった。

かつて魔王と勇者が敵対していた頃。
アラス・ラムスが"まま"である恵美と二人で住むことになり、
親権を奪われた父親状態であった真奥にも会いたがったため、
調停役として鈴乃と千穂も含めた面々で時折ヴィラ・ローザ笹塚に集まり
行なっていた食事の習慣は、今でも週に一度の頻度で残っていた。




真奥「真美ももうすぐ一歳、アラス・ラムスも幼稚園、千穂ちゃんは大学生」

真奥「いやあ、時間の流れってのは早いもんだよなあ……」

千穂「えへへ」

恵美「300歳越えだからっておっさんみたいなこと言わないでよね」

恵美「おっさん化ってのは内面から始まっていくそうよ?」

真奥「マジか……?」

しみじみと言う真奥に真顔で水を刺す恵美。

恵美「そういやアルシエル、あんた最近梨香とどうなわけ?」

恵美「二人になるたび、あんたの愚痴っぽい話題しか出てこないんだけど」

芦屋「ぐ……いや、最近は非常に忙しくてだな」

恵美の同僚である鈴木梨香は、芦屋に好意を持っている。
が、当の芦屋が魔王様第一と言って憚らない上、恋愛の類には消極的で
付き合っているんだかいないんだか微妙なところであり、
その辺を酒の勢いで愚痴られる恵美としてはどうにかしてほしいところだ。




千穂「忙しいって、お仕事の方は順調なんですか?」

芦屋「ええ、それはおかげさまで」

かつては真奥家の主夫として家事に勤しんでいた芦屋だったが、
紆余曲折を経て恵美が201号室にて真奥とアラス・ラムスと同居することとなり、
主との数日に渡る激論の末、自分と漆原が空き部屋である
203号室に引っ越し、有事には駆けつけるということで手を打った。

その際自分達の食い扶持は自分達で稼ぐことにし、
以前から度々引き受けていた塾講師の仕事に本格的に就くことにした。
かつては敵である人間を育てることに抵抗を覚えていた彼であるが、
今では曰く「いずれ魔王様の物になる日本の住人を育てると思えばやりがいもあります」とのこと。
ちなみに同居の漆原は、

真奥「お前ちゃんと家事は手伝ってんだろうな? 仕事してないんだからそれくらい……」

芦屋「魔王様、お言葉ですが、漆原にそんな気概があるとお思いで?」

真奥「……だよな」

漆原「だよ」

かくして今の芦屋は、仕事、家事のすべて、更には
共働きである真奥家の子育ての手伝いをこなす、主夫を超えた何かに成ったのである。
真奥としては申し訳なさを感じていたが、当人の忠誠心にはいささかのブレもなかった。




鈴乃がため息をついて会話を継いだ。

鈴乃「正直、アルシエルには同情する。こいつときたら本当に何もする気がないのだからな」

鈴乃「たまにアルシエルが遅くなる日など、うちに来て夕食をねだる始末で……」

そこで、失言に気づいて言葉が止まる。

千穂「鈴乃さん……」

恵美「ルシフェルにご飯作ってあげてるわけ?」

鈴乃「いや、なんだ、哀れみから施しを行なっているだけで……」

アラス・ラムス「なかよし? すずねえちゃんとルシフェル、なかよし?」

鈴乃「っ……」

アラス・ラムスの無邪気な問いに答える術を失い、押し黙る鈴乃。
年頃の女性らしくこの手の話題にワクワクした顔を見せる
千穂と恵美がこのときばかりは恨めしかった。

漆原「いいじゃん、ニート同士なんだから助けてくれたって」

鈴乃「同士などと言うなっ! 私は、一応、フリーターだっ!」




日本に来た当初は、エンテ・イスラから持ち込んだ宝石類を換金し
手に入れた金で働かず生活するという、遺憾ながら漆原の言うとおり
ニートと言われれば反論が難しい立場であったが、
数年経った今ではその金ももうほとんど残っていなかった
(そもそも何年も日本にいるつもりではなかった、という言い分があるが)。

そのため今ではバイトを色々と探し、結局真奥と千穂のいる
マグロナルドのクルーとして働いている。
腕を上げA級クルーとなった千穂に教えを乞う日々であった。

真奥「一応、が付くあたり、まだ一人前じゃないって自覚はあるわけだな」

鈴乃「ぐ」

千穂「いえっ、あのっ、鈴乃さんちゃんと頑張ってるんですよ、とっても」

千穂「でもその、まだちょっと笑顔が固いのと、融通が少し効かないかな、なんて……」

鈴乃「……千穂殿、慰めは無用だ。逆に辛い」

落ち込む鈴乃に何と言えばよいか分からず、千穂が慌てる。
と、話の流れを変える方法を思いつき顔が輝いた。

千穂「そうだ真奥さん、マグロナルドって言えば、ほら」

真奥「ん? ……ああ、そうだな」

真奥が箸を置き、一呼吸置くように全員の顔を見渡す。
そして最後に、恵美の顔を見た。




恵美「……何よ」

真奥「えーとだな、皆にも知っといてほしいんだが」

真奥「これまでずっとバイトとして頑張ってきたわけだけど……」

真奥「木崎さん……もう別の店に行っちゃったが、あの人の推薦のおかげもあって」

真奥「今度やっと、正社員になれることになったんだ」

一瞬場が鎮まり、

芦屋「……おめでとうございます魔王様ぁぁぁぁぁぁ!! このアルシエル、今日ほど嬉しい日は……!」

アラス・ラムス「?? おめでとぉぉぉぉぉ!!」

漆原「ちょ、うるさいよ! 真美が起きるだろ!」

鈴乃「ふむ、まあ……めでたいことだ」

芦屋がむせび泣き、アラス・ラムスが叫び、漆原が驚き、鈴乃が笑った。
そして恵美は、

恵美「……」

恵美「おめでとう。本当に良かった」

真奥「……ああ。ありがとう」

小さく微笑んで言葉少なに、だが心底喜ばしそうにそう言った。
その「良かった」が、単に自分達家族の生活が助かるということに対してではなく、
頑張ってきた真奥自身が報われたことへの言葉であることが分かり、こそばゆくなる。
それを誤魔化すように話を続けた。



真奥「あー、それでだな、こっからが本題なんだが」

真奥「恵美」

恵美「ん?」

真奥「ほら、俺達、真美ができて、なし崩しに籍だけ入れて、そのままだろ」

真奥「一応けじめっていうか……」

真奥「小さい身内だけのでいいから、っていうか貯金的に大きくもできないけど」

真奥「結婚式を挙げないか」




恵美は、何も言えなかった。

真奥と今の関係に至るまで、色々なことがあった。
その中で彼女は真奥を愛した。
真奥も彼女を愛した。そのことに今更疑いはない。

だが真奥は、悪魔として数百年を過ごし、かつて人も殺したことがあるせいか、
それとも生来そういう性格なのか、分かりやすく愛情を伝えてくれることは稀だった。
回数はおそらく片手で数えられる程度だっただろう。
それは例えば籍を入れたとき、真美が生まれたとき、……始めて結ばれたとき。
だからかもしれない。自分ばかり彼を愛しているんじゃないかなんて、
そんな得体の知れない不安をいつしか抱えるようになっていたのは。

その恵美にとって、彼のけじめという言葉は何よりも嬉しかった。
それを表現する言葉を持たず、浮かんできた涙をそのままにしていると、

千穂「おめでとうございます、遊佐さん」

千穂「いい式にしましょうね。ウェディングドレス着て、一生記念に残るように」

隣の千穂がそう言って屈託なく笑った。
彼女は真奥が好きだったことは周知の事実だ。いや、もしかすると今でも。
結果として恵美は千穂の初恋を散らせた恋敵となった。
それでも恵美は彼女を友人と思っているし、彼女もそうだった。

恵美「……ありがとう」

その礼は、愛する夫に。そして親友たる彼女に。




芦屋「ふむ、ならば経費を抑える意味も含めて、我々で準備を整えるというのはどうでしょう」

芦屋「早速式用の料理を調べなければ。おい漆原、貴様も今回ばかりは働いてもらうぞ」

芦屋「二人の思い出の動画作成、BGM選定、飾り付け、受付、余興、すべて貴様の担当だ」

漆原「多いよね!? てかドレスって、僕ら悪魔が教会で式挙げんの!? どうなのよそれ!?」

アラス・ラムス「わたしも! ママとおそろいのドレスきるー!」

鈴乃「いやちょっと待て。ここは和風の式もいいんじゃないか? 着付けなら任せろ」

漆原「変わんないよこの破戒僧!」

真美「ぅ……ぁぁあああああぁぁぁ!」

真奥「うおっ、どうした! うるさかったか? お腹減ったか? おむつか?」

芦屋「……ふむ、おむつは大丈夫なようですね」

漆原「んじゃ遊佐、おっぱ……ぐふっ!!」

恵美「セクハラ」

千穂「セクハラ……」

鈴乃「駄セクハラめ」

アラス・ラムス「せくはらー?」

そんな風に、彼らは今日も平和に過ごしていた。




場がお開きとなり、深夜。
201号室には三枚の布団が並べて敷かれていた。
危なくないよう、少し離れた位置に敷いた乳児用布団では真美が、
そして三枚の布団の真ん中では騒ぎ疲れたアラス・ラムスが既に寝息を立てていた。
就寝の準備を済ませた真奥と恵美も、二人を起こさないよう布団に潜り込む。

真奥「やっぱエアコン買ってよかったな。俺らは我慢できても子供には酷な暑さだ」

恵美「それはそうよ。でなければさすがに引越しを提案してたわ」

真奥「あの布団も、アラス・ラムスを泊めるために買ったやつけど、また役立つとは思ってなかったな」

恵美「そうね。……ふふっ」

真奥「なんだよ」

娘を挟んで隣に横たわる妻に問いかける。

恵美「考えてみれば不思議だなって。エンテ・イスラであなたと戦ったときには」

恵美「まさかこうなるなんて想像もしていなかったもの」

真奥「そりゃそうだ」

恵美「魔王と勇者が夫婦か……人生って分からないものね」

真奥「二十歳程度でそんなこと言うのはまだ早いぜ? 俺なんか300年以上生きてんのに驚くことばっかりだ」

恵美「そっか。そうよね」




恵美が真奥の頬に手を伸ばす。
彼の顔つきは昔と変わっただろうか?
少なくとも、人間真奥貞夫と始めて会ったときから目に見える変化はないように思う。
それが単に若さを保っているだけなのか、それとも――
彼の寿命は人間の身体となっても、悪魔としてのそれなのか、まだ分からない。

思えばおかしな家族構成だ。悪魔の夫、天使と人間のハーフである妻、
さらにそのハーフである真美、そして殊更特殊な生まれのアラス・ラムス。
この先誰がどのように成長し、生きていき、そしていつ死ぬのか。
何一つ確信できる未来などない。

それならば。いや、だからこそ自分達は、今までどおり、

恵美「……ねえ。愛してるわ、貞夫」

真奥「……ああ。俺もだよ、恵美」

最高に平和で幸せな毎日を頑張って送る。ただそれだけのことだった。


おしまい
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[ 2013年06月10日 22:34 ] カテゴリ:SS | TB(0) | CM(0)
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